黒執事27巻までの考察 「ファントムハイヴ襲撃事件」の犯人は?
黒執事26巻ではついに双子の兄がシエル達の前に現れ、これまで隠し続けてきたシエルの秘密がいよいよ明かされる形となりました。
双子説が囁かれるようになってからかなり経つと思いますが、説を確信していたファンにとっては「とうとう姿を現しおったな…!」という感じだったのではないでしょうか。
そしてその後描かれる回想ではもう伏線回収しまくりで、本当に見事としか言いようがない。さりげないセリフとかほんの小さなコマにも伏線が張り巡らされていて、「これもそうだったのか!」と驚くばかり。もうちょっとしたアハ体験ですよ。これを10年も前から考えていたなんて枢先生マジですごい。
さて、そんな回想シーンではこれまで断片的にしかわからなかった、すべての災厄の始まりにして最悪の事件である「あの日」の出来事も詳細に描かれています。
そこで今回は誰もが気になっているであろう「ファントムハイヴ家を襲った犯人は一体誰なのか?」について、新たに判明したことと合わせて考察していきたいと思います。
※当ブログでは本物のシエルを「双子の兄」、双子の弟で坊ちゃんを今まで通り「シエル」と呼んでいます。ややこしいと思いますがご了承くださいませ…。
まず、襲撃事件の犯人については様々な説があると思いますが、その中でもファンの間で囁かれているのが「シエル黒幕説」ではないでしょうか?つまり、双子の兄がご乱心して皆殺しにしちゃった説。
結論から言いますと、当ブログでも黒幕は双子の兄ではないかと考えています。
実は、私自身最初は「でも家族を殺す理由なんてないよなぁ…」と双子の兄黒幕説をあまり信じていなかったのですが、26巻や27巻の回想を読み進めるにつれ「おやおやこれは…?」と感じる部分がいくつかあり、黒幕説の確率はもしかしたらかなり高いのではないかと思うようになりました。
以下、黒幕説を裏付ける根拠となるポイントを一つずつ見ていきたいと思います。
●双子の兄からシエルへの異常な愛
回想で描かれる双子の兄は、外に遊びに行けないシエルのために一緒に部屋で遊んだり、咳でつらそうなシエルのためにホットミルクを持ってきてくれたり、ごく普通の「弟思いの優しいお兄ちゃん」という感じでした。
しかし、「将来はロンドンに出てオモチャ屋さんになりたい」というシエルに対して「どうして僕を一人にするの?」とあからさまに不機嫌な様子を見せ、「シエルと離ればなれになるなら伯爵になる勉強なんかしたくない!」と駄々をこねるなど、次第に弟思いを通り越してヤンデレなのでは?と感じる要素が出てきました。(シエルは兄のことを「優しい」と言っていますがシエル以外に優しくしている場面がない)
そして26巻132話で父ヴィンセントと母レイチェルに「伯爵になれば弟を支えてあげられる」などと諭されたあとのシーン。
パッと見は両親の言葉に納得したように思えますが、直前の「やっぱり僕はファントムハイヴ伯爵になるしかないんだね」のどこか諦めを感じるつぶやき。
僕はどう足掻いても伯爵になる運命
↓
でも弟はここから出て行ってしまう
↓
そんなのは絶対に嫌だ
↓
そうだ僕達二人の邪魔をする奴らはみんな消してしまえばいいんだ!
↓
「(どうすればいいか)わかったよ!」ニコッ
もし頭の中でこう考えていたとしたら…?
大好きな弟とずっと一緒に暮らすために、双子の兄はこの瞬間ファントムハイヴ家を抹殺することを決めたのかもしれません。
●当主の指輪
伯爵になる勉強なんかしたくないと言う双子の兄を説得するとき、レイチェルはヴィンセントから指輪を借りて「それはファントムハイヴ伯爵だけが着けられる特別な指輪」だと教えていました。
ファントムハイヴ家が襲撃された際、双子の兄は「他の誰にも渡しちゃいけない」と父の遺体から指輪を貰ってきたようですが、よく考えてみると、あちこちに使用人の死体が転がりしかも両親まで殺されている状況で指輪のことを思い出し血まみれの遺体から外す、なんてことが10歳の子どもに出来るのだろうか?と。普通ならシエルのようにパニックになって、とてもじゃないけど冷静ではいられないと思います(双子の兄の場合本当に出来そうな気もするからこわい)。
そして注目すべきは27巻139話でセバスチャンに「指輪は私が取り出しましょうか」と言われ「これは長男<ぼく>の役目だから」とシエルが断ったシーン。
これと全く同じセリフが134話にありますが、それは18時を過ぎてもなかなか迎えが来ず、双子の兄が「下の階を見てくる」と言い「僕も行く」とついて行こうとしたシエルに対し「これは長男<ぼく>の役目だから」と断ったシーンです。
シエルの言う「長男の役目」とは指輪は自分自身で手に入れるということ。そうすると、双子の兄の場合は指輪は自分自身でヴィンセントの遺体から手に入れることを意味しているのではないかと思います。
ファントムハイヴ家当主に代々伝わる指輪の大切さを聞かされていたから、指輪だけはきちんと手に入れなければならないと決めていた。だから「これは長男の役目だから」と一人で指輪を外しに行ったのではないでしょうか。
ヴィンセントの遺体があることを知っていた、もしくは指輪を貰うつもりでいたのなら双子の兄はあの日何が起こるのかをあらかじめ知っていたことになります。
●タナカを襲った人物
双子の兄黒幕説において極めて重要とされているのが、タナカさんの「シエル様は…あなた様には酷すぎ…」というセリフと、犯人と真正面から向き合っていたにもかかわらず「犯人は見ていない」という証言。
当初は「シエル様は…」に続く言葉として「殺されてしまった」などが当てはまるかと思われていましたが、回想でもわかる通り双子の兄はその時点では生きていました。なので「発狂している」「おかしくなってしまった」などが続くと思われます。
そして「犯人は見ていない」発言ですが、タナカさんは「このことは墓の中まで持ってゆくつもりでした」と回想が始まる前に言っていますが、「坊ちゃんが双子であること」を隠し通すという意味だけでなく「双子の兄がファントムハイヴ家襲撃の犯人であること」も含まれているのではないか、という気がします。
以上の2点に加え、27巻134話でタナカさんが刺されたこのシーン。
子どもにしてはかなり上のほうを刺していて背丈的に双子の兄には厳しいように思えます。
こちらがシエルとタナカさんの身長差。
しかし、同じく27巻134話のこのシーン。
この「キィン」という音は刃物同士がぶつかっている音だと思います。恐らくですがタナカさんはこのとき日本刀を手にしており、双子の兄は剣を手にしていたのではないでしょうか。剣ならば長さが十分あるので上のほうも刺せますし、フェンシングの手ほどきをフランシスから受けていたので剣の腕も上がっていたと思います。
もちろんタナカさんに勝てるはずはありませんが、相手が双子の兄であればタナカさん側から攻撃なんてできません。双子の兄の攻撃を受ける一方であったのを、シエルに気を取られた瞬間に背後から刺された。ただ、子どもの力だったため深くは刺さらず一命を取りとめたのだと思います。
これらの理由から、タナカさんを襲った人物は双子の兄で間違いないと思います。
●「お前があんな選択をしたせいで」
双子の兄黒幕説の可能性が高まってからもう一度全巻読み返したのですが、16巻に27巻の伏線がいろいろとあったことに気づきました。
まず、16巻93話からのチェス盤の上で双子が対話しているときのシーン。
そしてこちらが27巻135話で黒ミサの儀式のため衣装に着替えさせられたシーン。
着ている服や背景の装飾が同じです。
そして、16巻95話での双子の兄のこのセリフ。
右端に描かれているのはヴィンセントらしき人物ですが、ここにいるのは「シエルによって犠牲になった人」です。マダム・レッド、ジョーカー、ドールは女王の番犬の任務遂行中に命を落とし、双子の兄もシエルがセバスチャンと契約したため魂を喰われてしまいました。
しかし、ヴィンセントの死にシエルは何の関係もないのでは?と当時は疑問に思っていたのですが、双子の兄の言う「お前があんな選択をしたせいで」とは、シエルの「将来はロンドンに出てオモチャ屋さんになりたい」というあの決断のことだったのではないでしょうか。
シエルが自分の元を離れて暮らすなんて選択をしたせいで双子の兄はファントムハイヴ家を抹殺することを決め、ヴィンセントも犠牲になった。だから「シエルによって犠牲になった人」の中に描かれているのだと思います。
それにしても、子どもの頃の「オモチャ屋さんになりたい」という無邪気な将来の夢がこんな悲劇を生むことになるとは、なんともつらいですね。そもそもシエルがオモチャ屋さんになりたいと言ったのも、父や兄のように一人で何でも出来る立派な人間になりたいという想いからですし、兄を心から尊敬しているからこそ迷惑をかけないように生きたいという気持ちもあったと思います。
兄弟のほんの少しのすれ違いから歯車は狂ってしまったんですね。
●まとめ
最後に、「ファントムハイヴ邸襲撃事件」について一連の流れを整理したいと思います。
ファントムハイヴ家を抹殺することを思いついた双子の兄は12月14日の誕生日に決行する計画を立てた。使用人の数から双子の兄一人では無理だろうと思うので、何者かにファントムハイヴ邸を襲撃することを依頼したのではないでしょうか。
そして18時を過ぎ、すべてが終わった頃を見計らってヴィンセントの元へ指輪を取りに行く。両親を殺したのは双子の兄かどうかわかりませんが、二人がほぼ無抵抗で刺されていることからその可能性は高いかと思います。
使用人たちは依頼された何者かが殺したのだと思いますが、唯一タナカさんだけは生き残っていた。そこで双子の兄が自らの手で仕留めようとしているところにシエルが現れ、背を向けたタナカさんを双子の兄が刺した。
本当は協力者も殺して口封じするつもりだったのかもしれませんが、最後に裏切られ、シエルを人質に取られたか自分もタナカさんを刺したあと捕まったかで双子は拐われてしまう。檻に入れられたあと双子の兄が「誰にも負けない力があれば…」と自分を責めていたのもそのせいではないでしょうか。
以上が「双子の兄黒幕説」の私なりの考察になります。
まず協力者の何者かって誰だよって感じだし今更感のある話もあるだろうし何言ってるのかよくわからない部分もあったと思いますが、こういう考えもあるんだなくらいに思っていただければ幸いです。
黒執事の10年分の秘密が明かされ物語もいよいよ終わりに近づいているなと感じますが、まだまだ謎は残っていますし、シエルの復讐相手が双子の兄ならばこれからがもっと面白くなりそうですね。
残っている謎といえば、シエルの本当の名前もまだ明かされていませんよね。
個人的には、最終回で復讐を果たしたシエルが無事(?)セバスチャンに魂を喰われ、お墓に彫られた「○○○・ファントムハイヴ 安らかにここに眠る」で名前が明かされるのかなと勝手に想像してます。なんだか最後の最後まで明かされないような気がしますけどどうでしょう。
次巻は久しぶりにもう一人の黒幕であるアンダーテイカーも登場するようで楽しみです。
(2019年まで長いなぁ…。)